[時事]食料安全保障:自給力とは何か、そしてなぜ重要なのか

私たちの日常生活にとって、食べ物の供給は不可欠な要素です。しかし、日本の食事の大部分は海外からの輸入に依存しています。そこで問われるのが「食料自給力」、つまり国内だけで食べ物を十分に生産できる力です。農林水産省によれば、日本国内だけでの食糧生産による熱量供給は、1人1日あたり1755キロカロリーで、これはコメと小麦を中心とした計算です。一方、イモ中心の場合は2418キロカロリーを確保でき、これは体重維持に必要な2169キロカロリーを上回ります。

しかし、食料安全保障はただ国内で食糧を生産できるだけでなく、緊急時に国内生産だけで食糧供給を保つ能力にも関わっています。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻のような国際的な危機や、世界的な凶作や戦乱により食糧輸入が停止した場合、国内での食糧生産を急増させる必要が生じます。サツマイモはその有力な候補とされています。やせた土地でも育てやすく、乾燥や高温に強いため、緊急時の食料源として期待されています。

ただし、食糧自給の議論は食料だけでなく、肥料や飼料などの輸入にも依存しています。ウクライナ危機は、食糧輸入だけでなく、これらの必需品の輸入に対する依存度の高さを示しました。もし肥料が輸入できない状況になれば、自給力は一層低下します。さらに、サツマイモが肥料が少なくても育つとはいえ、生産地や生産者が不足している場合、それはまた別の問題となります。「三食イモ」だけで食糧問題が解決するわけではないのです。

これらの問題を解決するため、政府は食料自給率の向上に努めてきましたが、今回の法改正では、肥料についても国内生産に関する評価指標を設けることを検討しています。

現在、農家や農地面積の減少により自給率が低迷していますが、大量に安価な食料や肥料を輸入することにより、多くの人々が食料の安全性についてあまり不安を感じていませんでした。しかし、感染症の大流行や海外の戦争などの危機は、食糧供給の脆弱性を明らかにしました。

したがって、私たちが日々食べている食べ物は誰がどこでどのように作っているのか、そしてそれがどのように私たちのテーブルに運ばれてくるのか、その背後のプロセスについて理解することが重要です。食料安全保障は単なる食糧生産だけでなく、生産から供給までの全体的なシステムの安定性を問うものであり、私たち全員が関心を持つべき重要な課題です。

参考:危機時の食卓、三食イモも大丈夫か 砂上の食料自給力 – 日本経済新聞 (nikkei.com)